とある週末のこと、事務所の電話が鳴ったので出ますと、この春学生になったばかりのお子さんを持つというお母さんからでした。
彼女のお子さんは、大学を通して英国留学をするのだそうです。そして、問題はなにかというと、今回、大学が行ってくれるというビザ申請に際して、過去の入国歴について、事実と違う申告をしてしまったということなのでした。
高校のときにも、はやり学校を通して、先生同伴でイギリスに1~2週間ほどの短期留学をしたそうですが、その際のビザ(入国スタンプ)には、VSTと書かれていたのに、大学に出す資料には、Studentと書いてしまったとのこと。それは、高校の先生や添乗員から、何度も「Student」で行くと説明を受けていたからで、大学に提出した後、よくよく見てみたら、子どものパスポートにはStudentなどという記載はなく、VSTだったというものです。それにびっくりして、(母親のミスのせいで)ビザが出なかったらどうしよう!?とお電話いただいたのでした。
「私は虚偽の申告をしてしまったのでしょうか?」お母さんの不安はそういうことでした。
UKビザで学生関係のビザというと、観光ビザ(Visitor Visa)、学生ビジタービザ(Student Visitor Visa)、長期学生ビジタービザ(Extended Student Visitor Visa)、いわゆる留学(Student)ビザ(Tier 4)となります。このうち、観光ビザと学生ビジタービザ(Student Visitor Visa)は、渡航前の事前申請を(通常は)必要としない短期滞在ビザ(6ヶ月)ですが、同じ短期滞在ビザであっても、入国目的が観光ではなく、英語のコースやレッスンの受講の場合は、学生ビジターという扱いになります。入国審査時に、語学学校等の入学許可書や滞在予約確認書など、コースの受講元である教育機関から発行された書類を係官に提示し申し出ることにより、学生ビジタービザ(入国スタンプに手書きでVSTと併記される)を取得することになります。
電話口での相談で、パスポートやその他の資料を見たわけではありませんので、正確なことはわからないとしながらも、こうお話しました。
けっして虚偽の申告というわけではなく、学生だから、勉強しに行ったからStudent(いわゆる留学)という解釈はあり得ますし、イギリスのイミグレーションでもわかると思います。虚偽申告ではなかったか?と気がつかれたのはとてもよいことですが、虚偽申告というのは、事実を隠して嘘の申告をすることであって、このご相談は単に勘違いですから、それに該当しないと思います。あまり心配ないと思いますよ。
「そちらの事務所でなにかしていただくわけにはいかないでしょうか」それでも心配なのが母心というものでしょうか。
「それにつきましては、むしろ、高校の先生や大学の担当の方にご相談いただいて、必要であれば一筆書いて証明していただくほうが早いと思います。それでもだめでしたら、もう一度ご連絡ください」
お母さんは、少し安心したようでした。その後、彼女からの連絡はありませんので、きっと、お子さんのビザは無事下りたのでしょう。