黒龍江省木蘭探検隊 2 小さなしあわせの風景 2012/07 May 25, 2015 (Mon)

中国の北海道

ハルピン太平国際空港から、空港バス+タクシーで三棵樹長距離バスターミナルまでは1時間ちょっと。そこでまた切符を買って、トイレに行ったらもう出発時間、木蘭県までの長距離バスに飛び乗ります。

この長距離バスは、車両持込の個人経営でした。中国恒例の声が大きくて体格のいいおばさん車掌?は、おそらく運転手さんの奥さんと思われ、また乗ってね♪と愛想よく乗客に名刺を配って歩きます。乗客は全部で30名弱。経費節約のため、発車まではエンジンも止めてあってクーラーも効かず、これじゃ、30分もしたらたちまち熱中症です。

北京のスタッフは、前日の睡眠3時間とかで、160キロの道中ひたすら眠りこけていましたが、同じく睡眠3時間でも、中国の東北が初めての私たちは、窓から見える風景に釘付け。

ハルピンの街は近代的で、非常に発達しています。中国の洋風建物というと、なぜかキッチュになるのもご愛嬌。そんな建物が目立ちます。けれども、しばらく行くと景色は一変します。見渡す限りほぼ緑一色、水稲やとうもろこし、コーリャンの畑が延々と広がり、畑の境界には防風林。そして、その中央を県道が地平線の向こうまで続いているかのような風景は、パートナーに言わせると「帯広」「十勝」にそっくり、まさに「中国の北海道」は、いくら見ても見飽きることがありません。

バスは、停留所以外でもお客さんを拾うこともあれば、降ろすこともあります。

とある畑地帯で、男性の乗客がぞろぞろバスを降りていったので、てっきりトイレかタバコ休憩かと思っていたら、みんな、なかなか帰ってきません。パートナーが降りて様子を見にいってわかりました。日本でも見かけるような道端のパラソルの直売所で、まくわうりを買って食べていたのです。そういえば、さっき、何人かの乗客が、おばさん車掌になにかお願いして了解を得て盛り上がっていたのは、これだったのです。

待つことのしあわせ

直線と緩やかな起伏のある二車線の県道は、ところどころで一本道と交差しています。

だいぶ木蘭に近づいて来た頃、車中でキスしたり、女性が男性の膝に脚を乗せたりしてラブラブを繰り広げていた若いカップルが、下車していきました。窓から見下ろすと、左側の道端で、2歳ぐらいの小さな女の子と中年の女性が、誰かを出迎えに待っています。

カップルは二人のいる側へと歩いていきます。女性のほうが気持ち早足になったかと思うと、女の子が駆け寄って抱きつき、彼女も腰をかがめて女の子を抱きしめます。

ああ、彼女はこの子のお母さんだったのです。

子どもを連れて出迎えていた女性は、その子のおばあちゃんにあたる人でしょう。

出稼ぎなのか、ハルピンかどこかの遠くの街で働いていて、めったにおうちには帰ってこれらないパパとママを、恋しい思いで毎日毎日待っていたのでしょう。女の子の駆け寄り方が、そう想像させました。

またしばらく行くと、男性が三人。待ち人は、バスの若い男性でした。夕暮れの中、三人の男性が路傍に立ち、到着したバスを見つめ、待ちわびる光景。

途中下車した人たち、迎えに来た人たち・・・県道から延びている細い道の、見えないぐらいずっと奥に、番地もないような小さな農村がいくつもあって、そこではいまでも、「大地の子」そのものような質素な生活があるのでしょう。中国の北海道に感激したり、小さなドラマに出会ったり。木蘭県に到着するまでの2時間半のバス旅は、私の知らなかった中国をおしえてくれたのでした。

つづく