中国の地方都市は、一般的に治安や風紀が悪い、と私は認識しています。それが、今回の探検隊の旅を憂鬱にさせた原因のひとつです。
木蘭を発車した長距離バス。ハルピン市内の三棵樹バスターミナルに着いたはず・・・?
がっ、しかーし。
降ろされたのは、見覚えのない路地。
トイレをガマンしていた加藤、降り口の目の前にある「公厠」(公衆トイレ)に、吸い寄せられるように駆け込みます。水も流れない臭くて汚いトイレでしたが、ともかくすっきりしたワタシに、おばあさんがニコニコしながら手を差し出してくるではありませんか。
「1元」
こっ、これは、有料トイレだったのです。
中国にはいまも有料トイレはありますが、その場合、有料と書いてありますし、有料であるからには、トイレットペーパーを1回分ちぎってくれます。でもここは、へたすれば3時間がまんしてきたお客に、有料であることは隠し、すっきりした後にお金をむしり取るという「あり地獄」方式のトイレだったのです。
一部始終を見ていたパートナーが、その公厠おばあさんを「お便所ばばぁアリ地獄」と名づけ、「まりつ(麻里子)が陥れられたァ」と大笑いしていたところ、なにを勘違いしたのか、そのおばあさんが小窓から身を乗り出して、ニコニコ話しかけてくるではありませんか。
パートナーがカメラを向けると、満面の笑顔を返してきます。
そのころ、スタッフが、そこで買ったレモンティーのフタのリングがない(開栓済み)ことに気づき、おばあさんに抗議したところ、開栓前の緑茶と交換してくれたのですが、彼がひとくち飲んでしまったレモンティーを、おばあさんは、なにごともなかったかのように、商品の入っている冷蔵庫にうやうやしく戻したのでした。
※ 降りた場所はターミナルの建物裏手の路地で、バスターミナルにはちゃんと無料のトイレがあります。
まー、ともかくすっきりした私たちは、ホテルに向かうためタクシーを拾います。予約したのは、チェーン店の「莫泰(ムータイ)168」。外国人もよく泊まる格安ホテルで、紹興や上海で私たちも利用済みです。
「ムータイ168? 知らないなぁ」と運転手。
「それに、そこの道路は工事中で車が行けないよ」。別の運転手もやってきて、口をそろえて繰り返します。
「・・・なんだってさ、まりつ」とスタッフ。
なーんで、ムータイ168がどこにあるか知らないのに、前の道路が工事中だって知ってるわけ? 見え透いたウソを平気でつくのが中国人。
「もっと安いホテル知ってるよ。案内してあげるから乗りなよ」と誘ってきます。
シゴトはできるけど、お人よしのスタッフ。「それじゃ、乗っていこうよ、168より安いし」
そーです、これは典型的な客引きタクシーです。それにつられて乗っていけば、安い部屋はないと言われて、高い部屋に泊まらせられるに決まってます。
地方都市のタクシー運転手は悪質な人間が多いのですが、中でもハルピンは抜きん出ているとのウワサ・・・
その手には乗りません。
「騙されたらダメ!」。106キロの巨体を引っ張っていく加藤。北京で純粋培養された彼は、ガイジンである私たちよりも、地方都市の悪質さに鈍感です。ターミナルなどでたむろしているタクシーには、ゼッタイに乗ってはいけません。ガラの悪さは、顔を見ればわかります。
しばらく歩いて、私たちは、真っ当に?流しているタクシーをつかまえ、あらかじめ距離と値段を確認してホテルへと向かったのでした。