中国人との結婚・離婚 研究その9 中華人民共和国民法通則第147条のナゾ 外国法で成立した婚姻が中国でも「有効」とは?

中華人民共和国民法通則

第147条

中華人民共和国公民と外国人との結婚には、婚姻締結地の法律が適用され、離婚には、案件が受理された裁判所の所在地の法律が適用されるものとする。

心が広いのか、単なる不備なのか

中華人民共和国民法通則第147条は、中国公民と外国人の婚姻は婚姻締結地の法律によるとし、その婚姻は中国国内でも有効だから、あらためて婚姻登記や承認を受ける必要はない、といえば聞こえはいいが、そもそも外国法による婚姻の報告的届出の制度がないのである。

そこで、中国国内では、婚姻締結地の国の公証・その国にある中国在外公館の認証済み婚姻受理証明によって中国の婚姻証の代わりとすることになる。

外国法で成立した婚姻並びに公証・認証済み婚姻受理証明は中国国内でも有効…そもそも、この「有効」の意味はなんだろうか?法律上有効、というのはわかる。けれども、実務上・実際上はどうなのか?この「有効」は、現実的にどのように使えるのか?

たとえば、日本で結婚した日本在住の日中夫婦が中国旅行したとする。ホテル宿泊の際、一方が中国公民であれば、建前上、夫婦の証明(通常、中国の「婚姻証」)を提示することになっている。実際は結婚証を求められることはなく、身分証でOKのようだが、結婚証も同一住所の身分証もないこの日中夫婦の場合、毎回、公証・認証済みの婚姻受理証明を提示することになるのだろうか?

そもそも、外国で成立した婚姻は中国国内でも有効であるから、わざわざ婚姻登記したり人民法院に承認申請しなくてもいい、なんていうのは、いかにも親切で懐が広いようでいて、実は単に報告的届出制度がないからカモフラージュするしかないだけのことだ。

外国法による婚姻の場合、中国人配偶者の戸口簿の婚姻状況に「既婚」と反映されるのみで、国外で婚姻した外国人配偶者の存在はない。そして、戸口簿については強い強制力はない。したがって、日本で結婚すれば、既婚のはずが「未婚」の中国人配偶者は大勢いる。外国で勝手に結婚した人民のことなど知らないよ、ということなのだろう。

※日本人と結婚し、来日のために日本の在外公館に日本人の配偶者等の特定ビザを申請する場合は、婚姻状況が「既婚」に変更された戸口簿の写しが必要となる。

つづく

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