投資経営ビザで騙された中国人留学生 ビジネス構築編 その1 January 7, 2014 (Tue)

「は~い、加藤先生、Sです」

上海虹橋鉄道駅でSさんと別れ、私たちが帰国して数日後、オフィスの電話が鳴りました。

「このあいだはありがとうございました」「こちらこそ。なんだかSさんがいなくて淋しい感じがしますよ」「私もよ~。淋しいよ~」

「私、いま、ふるさとにいるですよ。山東省の」「あの日に帰ったんですか?」

「いいえ。荷物倉庫に預けて、いるものだけ持って、その日は遅くなったから、次の日の夕方6時のバスに乗って帰りました。着いたら朝の10時ぐらいだった」「それはたいへんでしたね」「うん、でも、バスの運転手さんから直接切符買ったから、安かったヨ」

最近、中国の長距離バスにはだいぶ乗りなれてきた私ですが、そんなワザがあったとは。やっぱり本家本元にはかないません。Sさんの帰省は3年ぶりだそうです。

「さっき、鶏小屋の掃除しましたよ」「トリ小屋~!? Sさんの家、トリ飼ってるの?」「うん、うち、前は鶏卵から返して、小さい鶏売る仕事してた」「私、鶏苦手なの」「でも、卵からかえった小さいの鶏はカワイイよ~」「ああ、ひよこね」「そう、ひよこ」

「お母さんとごはん作ったり、家中の掃除してる」「それは親孝行ですね。ご両親も喜んでいるでしょう?」「そうですね。でも、お金もあげないと」「えらいなぁ」

「私考えル、なにですよ」「?」「お母さんにも、桐郷(浙江省嘉興市桐郷市; 繊維・織物の生産地)でセーター買ってくればよかった」「でも、また行くでしょう?」

「そうですね。私もほしいものいっぱいあるし、また行きたいよ」「私も」「ふぉんとぉ~? じゃ、一緒に行く?」「うん。だって、Sさんが着てたあのグレーのふわっとしたの、私もほしいんだもん。ほら、今回の出張では、マイ・ビズパートナーが目光らせていたから買えなかったでしょ」

「私考えル、なにですよ、日本人はひとりひとり別に食べるから、このあいだの二人の経営者との食事でも、加藤先生とニシナ先生(ビズパートナー)は大丈夫かって心配した」「全然! 私たち、大皿にお箸突っ込んで食べる中国方式、好きですよ」「そうなのぉ~?」

「日本でも、家族とかでは大皿にお箸入れて食べますよ。Sさんが借りてたアパートのすぐ下に、お惣菜屋さんあったでしょ? あの日、あそこで買って帰りました。おいしかった♪」「え~、加藤先生とニシナ先生はああいうの食べられるの?そんな日本人見たことないよ~」

「そうなんですか?ああいうのがいちばんおいしいけど。中国のフツーの人たちがふだん食べてるものが。Sさんがデパート内にあるって言ってたスーパーにも行きましたよ」「え~、そうなの~?」

「そーだ、今度、私、Sさんの実家にも遊びに行ってもいいですか?」「ほんと? いいよ~。でも、うち、貧乏よ。それでもいい?」「そんなの関係ないですよ。あ、でも、私が行くときは、鶏は放しておかないでくださいね」

つづく