投資経営ビザで騙された中国人留学生 ビジネス構築編 その7 December 4, 2016 (Sun)

まもなく、とある真綿工場に到着しました。まずは社長室に通されます。そして、社長と迎えに来てくれた男性の案内で、一同は工場の全工程を見学。運転してくれたその男性は、Sさんの話によると、自分自身も小さな工場を経営しているとか。

これまでにも中国の工場には何度も訪れたことがありますが、このような家内工業に毛が生えたような工場で工程を視察したのは、初めてのことでした。驚いたことに、そこでは初老の男性や女性も働き手でした。むしろ、そういう年代が中心でした。初老というよりは、老人といってもよい人もいました。北京など外部から人が流れ込んでくるような大都会の街では、若年層ばかりが目立ち、早ければ50歳で定年が訪れる中国で、そういった光景を目にするのは驚きでもあり、新鮮でした。

この繊維関係に関して、Sさんは、帰国後2ヶ月にわたって意欲的にリサーチしていました。知識もつき、製品を見る目もだいぶ養われたのか、私たちに様々な説明をしてくれます。どういうものがよりよい品質なのかなど。Sさんのこだわりは、「品質」でした。

ここは機械化加工場です。作業工程により、男性の仕事と女性の仕事に分かれています。ガイコク人がここへ来ることなどないのでしょう。黙々と手を動かす人もいましたが、カメラを向けると、愛想よく笑顔をくれる人たちもいました。

外資の工場ではなく、伝統的な地元資本の工場で「労働」というものを間近で見たことは、とても貴重な経験でした。機械織とはいっても、実際は人の手そのものが頼りです。その仕事ぶりを見れば見るほど、これは機械加工ではなくて、手仕事なのでは?と思えてなりません。キビキビと手早く、機械のように正確な動き。その鮮やかな手つきに見とれます。このレベルに到達するには、相当年数かかるでしょう。その顔つきからは、自分たちの技術や仕事に対する誇りが感じられます。「中国では大卒ホワイトカラーは三人でようやく一人前」が当たり前ですが、彼らは違いました。地味な作業に黙々と向き合うこういう人たちの労働こそが、中国の産業と発展を支えているのだと思いました。

見学しながら、私も社長に質問してみます。日本人の好みや求める品質、センスについてはもちろんのこと、もし自分がこのビジネスをするなら・・・という目線で。それが、Sさんの立場に立って真剣に考えることだと思うからです。

ひととおり視察した後、社長室に戻り価格表を作成してもらいます。基本的に内資同士の取引で、パンフレットも価格表もないのでしょうが、作ってくれることになりました。

つづく