工場社長から昼食の招待を受けて、私たちは呼ばれることにしました。社長のクルマはベンツ。儲かっているんだなぁ~。和やかに食事をした後、丁重にお礼を言って繊維工場社長と別れ、手配してくれた人の案内で、午後は別工場の視察へ。
工場内部を案内された私たち。先ほどの工場では、機械で繭を引き伸ばしていたのに対し、こちらの工場では、年配の婦人たちが、昔ながらの方法で繭を手で引き伸ばして真綿にしているのでした。初めて見る光景。きっと、彼女たちは少女のときから同じ作業を続けてきたのでしょう。時が止まったかのような時間が流れていきます。撮影する私たちに、笑顔を向けてくれる人もありました。
上海経済圏に属し、海を擁する浙江省は、中国でも最も発達した地域のひとつです。本屋には「浙江商人に学べ」といったビジネス本が並ぶほど、伝統的に商売に長けた地域でもあり、農民でもホワイトカラーでも、なにかしら別の商売を営んでいるのはごく普通のことです。中国の紡績・繊維・アパレル産業集積地でもある浙江省、先ほどの工場でも働き手は若者ではなく中年層でしたが、こちらの工場ではさらにその母親世代が担い手であることを知り、あらためてその舞台裏を垣間見た気がしました。
「すぐ近くだから、うちに寄っていく?」。機械引き工場、手引き工場を手配してくれた人は、実は自分でも工場を営んでいるのでした。
彼の工場兼住居は農家の佇まいでした。中国は、都市では集合住宅が一般的ですが、農家は一軒家で、ちょっと豊かな地域では三階建ても普通です。家の向かい側は桑畑。そして、工場主には20代後半ぐらいの息子さんがひとり。なんでも、都会の大学を出て仕事をしていたけれども、家業を継ぐため帰ってきたとか。1階車庫(1階は納屋と車庫で、納屋には繭が置いてありました)には日産のTEANAが鎮座しています。
Sさんがなにやら私たちにささやきます。 「なにですよ、ここの社長、私を息子のお嫁さんにしたいみたい」
ひえ~!(それはやめたほうがいいですよ社長さん、あとがタイヘンです by 日本組)
機械引き工場でもらった繭玉と、手引き工場でもらった引き伸ばした真綿のサンプルをおみやげに、帰りはバス停まで送ってもらい、そこからミニバスに乗って街に戻ります。